青薔薇に愛を込めて
「それでは、随分遅れたけれど主役の登場といこうか?」
そう言って腕を差し出してくる彼。
腕を組めってこと?
…こんな最低な男と組むわけないじゃん。
私は差し出された腕には一瞥しただけで、彼の金色の瞳に視線を移す。
「主役って?」
「僕たちのことに決まっているじゃあないか。今日は婚約披露宴と姫の歓迎会だよ」
「……ホールはどっちですか」
私は彼の言葉を聞かなかったことにして、とりあえず当初の目的を果たすため、問いかけた。
そんな嘘に騙される訳ないって、分からないのだろうか。
だって柚子の父親が主催しているのだから、親友の私が主役を知らないはずがない。
それに確か、今日のパーティーは柚子の父親の会社と彼女の恋人である誠司さんの会社の親睦会だ。
私は心の中で、最低男のレッテルの上に嘘つきのレッテルをびたっと力一杯貼り付けてやった。