青薔薇に愛を込めて
「リツィリアさ、ん…お願い……」
彼の服の裾を弱々しく掴んで懇願するけど、彼はこちらに笑顔を向けるだけ。
ああ、あまりの恐怖に涙さえ出ない。
だんだんと着実に開いていく扉の向こうから光が足元に差し、私はそれから逃げるように恐る恐る一歩後退した。
でも、視線だけは扉の向こうに固定されたまま。
ぎぎぎ…
「っ―――!」
最後まで開ききってしまった扉。
ホールの景色に私は思わず息を呑んだ。
心臓がこれ以上ないぐらいに暴れまわっている。
「ほら、みんな僕たちを待っているんだ。嫌なのは分かるけど、少しだけ、顔を出していこう」
何が分かるって言うの!
彼の無責任な発言に。瞬間、怒りで頭が沸いたけど、それさえも口にすることができないぐらい私は硬直していた。
扉の向こうは、そう、本物の中世ヨーロッパのようだった。
私たちの行く道だけ人々の姿はなく、綺麗な一直線が作られている。
その花道のような通路の先は、とても豪奢な椅子が二つ。
それもただの椅子ではない。
背もたれは長く、まるで王様が座るような感じだ。
そしてそれを取り囲むようにそれぞれ深く腰を折る人々。
彼らはとても色鮮やかで。