青薔薇に愛を込めて
女性たちが着飾るドレスや宝石だけではない。
男性も黒い燕尾服ではなく、色とりどりの上着。
そして彼らをきらびやかに見せている何よりの要因は、髪の毛の色だ。
彼らの頭髪は日本人の黒髪ではなく、金髪や赤毛、極薄い茶色など、全体的に色素が薄い。
人々の容姿も、さっきまでの仮装パーティーと明らかに様子が違う。
「柚子…柚子はどこ?」
黒髪は誰一人いない。
濃い青のドレスをまとった人がいても、その人は私が探し求めている人物ではなかった。
ここは、柚子の家じゃない……!
突き付けられた事実を、頭の中ではあり得ないと否定する。
ヴェルが一人で私をこの変な場所まで運んだっていうの?
そんなの無理に決まってる!
でも何度瞬きをしてもその異国のような光景は変わらない。
「前に進んで、ヴェレーナ姫」
耳元で囁くリツィリアさんの声がぐわんぐわんと頭に響く。
私には、隣にいる彼や顔を伏せている大勢の人々が、まるで悪魔のように見えた。
私を見知らぬ土地に連れ去って、恐怖におののく私を楽しげに嘲笑う。
私はなけなしの理性でなんとか喚きたくなる衝動を抑えながら、もう一歩後退した。
怖くてたまらなかった。