青薔薇に愛を込めて
そうだ、電話すれば……!
もしかしたらここは柚子の家にあるもう一つのホールで、私はただ迷子になってるだけかもしれない。
柚子に電話すれば、彼女が迎えに来てくれるはず!
私はじりじりと後退しながら、震える手でポケットの中に手を伸ばした。
その中のケータイを離さないように握れば、慣れ親しんだ硬質な感触にいくらか安心する。
もつれる指先でなんとかケータイを開き、電話帳から柚子の名前を選んで発信。
プルルル…プルルル…プルルル…
三度目のコールの後、聞こえたのは。
『―――陽花!?あんた今どこにいるの!?』
「ゆ、ず……」
ああ、柚子だ…。
求めていた声を聞けたからか、自然と涙が滲む。
「今、ホールの前にいて……。柚子、迎えに来て…お願い……」
『ちょっと、何言ってるの!私も今ホールの前にいるのよ!?
あんたがいなくなって警察も来てるの!早く戻ってきなさいっ!』
「違う……私、仮装パーティーの会場じゃない方のホールにいるの」
『ふざけないで!ウチにそんなものないわよっ!』