青薔薇に愛を込めて
「っ!」
慌てて手を離せば、白いシャツが肘まで捲られ露になっていた腕にうっすらと血が滲んでいる。
とっさに謝罪の言葉が出なかったのは、彼に対して嫌悪やら恐怖やら、負のイメージしかなかったからだ。
でも怪我をさせてしまったのだから謝らないと…
「……」
罪悪感はあるけど、どうしても言葉にはできなかった。
タイミングを逃してしまったのだ。
私はただ傷を見ながらおろおろするばかり。
そんな私の様子がさっきとは変わったことに気付いたリツィリアさんが、やっと腕の力を緩めてくれた。
私は即座に飛び出して、今度は慎重に床に足をつける。
「落ち着いたようだね」
リツィリアさんの声に振り返って、こくんと小さく頷けば、彼は楽しげににこりと笑う。
傷にはあまり関心がないようで、気にする素振りも見せない。
逆にその様子が私に罪悪感を募らせた。