青薔薇に愛を込めて


ゆっくりしているけど、確実に苛立ちを含んでいる口調でリツィリアさんは次から次へと言葉を紡ぐ。
たぶん、一昔前のアニメとかなら私は今、目を白黒させていると思う。


所々失礼な言葉を挟みながらさらに彼は続ける。



「夜会直前に逃げ出したのは、まあ君はちゃんと戻ってきたし僕も遊んでいたから、水に流すとしよう。
けれどホールを目前にして君が逃げ出した後、僕がどれだけ大変だったか分かるかい?ホールにいた貴族たちは皆、君が逃げ出す姿を見てしまったんだよ?君の先のことをなんにも考えていない愚かな行為のせいで、僕のせいではない徒労を僕が強いられたんだ。君が――」

「す、ストップ!」



ちょ、待って待って!

にこにこと毒を吐き続けるリツィリアさんに半ば呆然としながら、聞き逃してはならない言葉をなんとか聞き留めて、彼を止める。

なおも口を開こうとする彼が言葉を発する前に、私は滑り込みセーフで発言権を勝ち取った。



「ちょっと、婚約披露宴の直前にあ、あれで遊びますかフツー!」



遊びとはおそらく、私が運悪く遭遇したあれのことだ。


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