青薔薇に愛を込めて
雰囲気からして、ここはヨーロッパのどこかだと思うのだけど。
「ここは何て言う国なんですか?日本行きの飛行機はあるんですか?あ、もしくはアメリカ行きの」
日本には飛行機一本で行けなくても、世界最大規模を誇るアメリカになら行けるはず。
そんな期待を込めて早口に捲し立てた。
でも、告白した真実も淡い期待も、リツィリアさんの一言で切り捨てられてしまう。
「…そんな嘘が通用すると思っているのかい?」
「え?」
そう告げたリツィリアさんの表情は冷たい。
確かに口の端は上がっているけど、間違っても笑顔だなんて言えない。
「君がヴェレーナ姫ではないだって?はは、それはありえないよ。だって、黒髪の一族はもう姫しかいないんだ。そこらへんに黒髪がいたらそれはもうびっくり仰天だよ。それも姫と同じ顔の人なら尚更」
「でも、本当に私はヴェルじゃないんです!」
それに、アジアに行けば黒髪なんてそこらへんにいるし!
リツィリアさんの言っていることは、なんだか地球のことじゃないみたいだ。
黒髪の一族が一人しかいないなんてそんなことあるはずがない。
嘘を言っているのは彼の方だ。