青薔薇に愛を込めて


「…確かに、姫は青緑だったはず」



ぽつりと落とされた一人言のような呟きに、私は嬉しくなった。

分かってもらえた!



「けれど…ヴェレーナ姫ではないなら君は誰なんだい?
その顔は、確かに姫だと記憶しているよ」

「私ですか?私は木村陽花です」

「キムラハルカ……?聞いたことのない名だな」



そりゃそうだ。
こんな一般人の名前を知っていたら、それこそびっくり仰天だ。

リツィリアさんは難しい顔で私を観察する。


すると、ふいに彼はドアの方へ顔を向けた。



「……ジュリエ。いるかい?」

「はい。殿下」



きい、と遠慮がちな音をならして開かれたドアの向こうから、ジュリエと呼ばれた女性が現れた。


少し年配で、感情のない冷たそうな表情からキャリアウーマンのオーラがビシバシ伝わってくる。

そして、彼女は紺の裾が踝(くるぶし)まであるワンピースに白いエプロンを付けていて。
なんというか…そう、メイドさんとシスターの衣装を足して二で割った感じ。


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