青薔薇に愛を込めて
何よりも聞きたいこと。
それは。
「ここはどこなんですか?」
「……どこ、とは?」
国のことなのか、位置的なことなのか、あるいは建物のことなのか。
漠然としすぎて私の求める答えが分からなかったようだ。
漠然としすぎているというか、私が聞きたいのはその全てなのだけど。
すっとリツィリアさんの手が差し出された。
なんのことか分からなかったけど、彼の視線の先にグラスがあるのに気が付いて、それを手渡す。
ああ、もうちょっと飲みたかったな…
「えと…じゃあ、この国の名前を教えてください」
「アルジェントだよ」
アルジェント…
だめだ。聞いたことがない。
だって私、受験には日本史と倫理を選択する予定だから、地理も世界史も採る必要なくて、授業中ずっと寝てたんだもの。
まあ、後悔しても今更なのだけど。
「ちなみに、ヨーロッパですよね?」
今いる部屋の内装が柚子の家のとそっくりだから、おそらくここはヨーロッパのはず。
少し古くさい気がするのは、…彼の趣味だろう。