青薔薇に愛を込めて
├予想外の遭遇
――――……‥
豪奢な装飾が至るところにしてある廊下をひたすら走った。
不思議と、涙はでない。
色々なことがありすぎて、たぶん、私の中の何かが麻痺しているのかもしれない。
「ど、して…こんなことに……!」
ここは私のいた世界じゃない。
だって、廊下から見えるあの薔薇園には青い薔薇がたくさん咲いていた。
ヴェルといた時は気付かなかったけど、昼間の明るい光に照らされているそれは、確かに青色だ。
青い薔薇。
それはいまだに作り出すことができない花。
作り出すことができたとしても、深い青は不可能で、淡い水色か青紫色になってしまうらしい。
でも庭に咲いている薔薇は深くて鮮やかな青だ。
私の世界ではあり得ない色。
非現実的すぎる。何もかも。
異世界にいるなんて信じたくないし、正直信じられない。
でも、少なくともここは私が知っている場所ではない。