青薔薇に愛を込めて
思い返してみれば、リツィリアさんの瞳の色だって私の世界ではあり得ない色だ。
金色の瞳なんて映画で見るぐらいで、実際に存在しているはずがないもの。
手を振り払った時の、リツィリアさんの驚きに目を見開いた顔を思い出す。
彼はさぞ困っていることだろう。
起き抜けに爪を立て、ヴェルの偽物だと告白。そして急に笑い出し、急に怒り出す。
頭が狂っていると思われてもしかたがない。
考え事をしながら全速力で走っていると、角を曲がった先に人がいるのに気付くことができなかった。
どんっと派手な音をさせて、私は衝突してしまった。
「きゃっ」
衝撃で尻餅をつく。
痛い…
「おや、申し訳ない。大丈夫かい?」
低い渋味のある声にぱっと見上げる。
その姿に私は目を疑った。
髪の毛は綺麗な白髪で、表情は柔和。
右頬だけえくぼができるその笑顔。
うそ……
どうしてここにいるの?
「お、じいちゃん…」