青薔薇に愛を込めて


女の子だろうか、
それとも男の子だろうか。


中性的な顔立ちからは全く判別できない。



「後で遊んであげるから、こっちに来て話を聞いてくれないかい?」



リツィリアさんは優しく微笑みながらそう言う。

すると、どうやら迷っている様子で。
物欲しそうにリツィリアさんを見つめ、でも不安そうに時々私を見てくる。


たぶん、リツィリアさんと遊びたいけど見たことのない私がいるから緊張しているのだと思う。



「あの、一回放してくれませんか?」



そうしたらあの子もこっちに来てくれると思うんですけど。

それにその隙を突いて逃げ出せるし。


でもリツィリアさんは微笑みをそのまま私に向けて言った。



「放してしまったら君はまた逃げてしまうだろう?だからダメだ」



うっ…

まさに図星で、私は何も言えず口をつぐんだ。


前科があるから彼ももう信用していないのかも。

で、でも!
最初に逃げ出したのはヴェルだし!
私が逃げ出したのは至極当然の事だと思うし!

…まあさっき逃げ出したのは私も悪かったけどさ。


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