青薔薇に愛を込めて
けれど、私が恥ずかしさを極限まで押し込めて我慢したのに、リツィリアさんは拍子抜けするほどあっさりと否定した。
「ああ、そのことなのだけれど。
彼女はヴェレーナ姫ではないそうだよ」
「――えっ!?言っちゃっていいんですか?」
驚いて大きな声を上げた私に彼はにこやかに頷いて「彼らは大丈夫」と保証してくれた。
「そうかそうか、その為にローニャを呼んだのだね」
「ああ。だから君が来る必要なんてこれっぽっちもなかったんだけれど」
「ほっほっ、だが早く姫……ではなくて、ええと、何とお呼びすれば?」
「あ、私の名前は木村陽花です」
「ではハルカ殿。…儂も早くハルカ殿に会いたくてなあ。それにこれも気になったのだよ」
サジェルバさんはごそごそと上着のポケットの中を掻き回す。
その時にポケットの中を覗くように上半身を屈める仕草が、おじいちゃんにとてもそっくりで、凝視していたら
すぐに取り出された物に私は目を見張った。