青薔薇に愛を込めて
「それ私の!」
サジェルバさんの手にはドレスのポケットに入れていたはずのケータイと眼鏡があった。
慌ててポケットの場所を探るけど、着ているもの自体が違うからポケットすらない。
いつ着替えたのかという、とても今さらな疑問をとりあえず頭の隅に追いやった。
あれは何がなんでも取り返さなければ!
日本――いや、柚子やおじいちゃんに繋がる唯一の手段なのだ。
今の私にはどんな財宝よりも価値がある。
「か、返してください!」
奪い返そうとリツィリアさんの腕の中で暴れる。
まあ、相変わらず力が緩むことはないけど。
そんな私が鬱陶しいのか、それともサジェルバさんの行動にあまり良い感情を持っていないのか
リツィリアさんは私にしか分からない程度に小さくため息を吐いて、うんざりした声音で言った。
「サジェルバ、返してやりなさい」