先輩と後輩の恋愛事情
もちろん私は先輩の隣・・・なんだけど・・・。
「ちょっと隼人、実梨の左隣は俺だよ!」
「何言ってんだよ!
桜井の隣は俺だ!」
右隣は黒木先輩だけど、もう一人分空いた私の右隣を紀田くんと佳が奪い合っていた。
「ふ、二人とも・・・」
あ、そうだ。
言うのが遅くなったけど、紀田くんと佳。
二人は小さい頃の幼馴染らしい・・・。
けど紀田くんは小学校に入る前に引っ越してしまって、それ以来あっていなかった。
で、高校に入る頃にはまたこっちに戻ってきた。
二人もこの前顔を合わすまでお互い同じ学校にいることは知らなかったらしい。
運命の再会ってやつかな?
「おい、二人とも、実梨が困ってるぞ」
「「あ・・・」」
先輩が注意して二人は気づいたのか、言い争いを止めた。
「まったく、しかたないわね~」
さっきまでやり取りを聞いていただけの早瀬先輩が、私の左隣に来てドカッと座った。
「これで席の取り合いは起らないでしょ。
ほら、さっさと二人もあっちの席に座って早く始めましょ」
そう言って早瀬先輩は自分が歌う曲を入れてマイクを持ち、立ち上がって歌いだした。
何だか先輩は吹っ切れて明るくなったなったみたい。
よかった・・・。
早瀬先輩に席を取られて、しょうがなくしぶしぶと私たちの向かい席に座る二人。
そんな二人を見て、私は気づかれないように小さく笑った。