先輩と後輩の恋愛事情
「また会ったね〜」
笑いかけて近づいて来たのは言うまでもない、黒木先輩。
と、ちょっとムッとした表情の黒木先輩の彼女の早瀬先輩だった。
「ほ、本当に今日はよく会いますね…」
まだ三回目だけど…。
「あ、あの先輩!」
「ん、俺?」
「えっと…夏休みのあの時はありがとうごさいました」
軽くペコリと頭を下げる。
やっとお礼が言えた!
「え、思い出してくれたの?」
「はい、まぁ…」
「そっか〜、何か嬉しいな〜♪
あ、そう言えばまだ名前聞いてなかったよね?」
「あ、そうでしたね
私は1年C組の桜井実梨です
で、こっちが…」
「実梨の彼氏の、1年B組内野宮佳です」
佳、最初の言葉はなくていいのに…。
実際面と人に向かって言われると恥ずかしい…。
佳と二人で自己紹介をし終えた後、先輩は「へ〜…」と軽い反応をした。
「ねぇ愁、そろそろ行こう?
帰りが遅くなるとパパに怒られちゃう…」
「あ、うん、じゃあ帰ろっか
二人ともまたね」
そう言って先輩たちは手を繋いで帰って行った。
人前で手を繋ぐとは、なかなかやるな…。
二人の後を見ていると
「俺、あの人たち苦手…」
佳が隣でポソッと呟いた。
「そっか、私も早瀬先輩は苦手…」
二人で先輩たちの後をジーと見つめながら、見えなくなるまでその場から動かなかった。