先輩と後輩の恋愛事情
「じゃぁまぁ、本屋にでも行こっか」
「うん」
くっ、でもまだめげない…!
佳と隣に並んで近くにある本屋に歩いて向かう。
夏ということもあり、太陽の日差しが嫌なほど照らしてきて暑い…。
こんな真夏の中歩いている人なんてあまりいない。
デート…。
もうちょっと曇った日にしとけばよかったな…。
額の汗が頬から首筋に伝う。
暑〜い。
なんかもうクラクラしてきた…。
意識が薄れ、足がもつれる。
あ……!
気づいた時にはもう遅かった。
体は地面に向かって倒れていっている。
やば〜…。
けど、もうそんなことを気にはしていられなかった。
このまま倒れて病院送りかも…。
その時、ガシッと誰かが私を受け止めてくれた感じがした。
佳…?
もうろうする頭と眼で受け止めてくれた人を見ようとした。
意外としっかりした体つきだから、女の人ではないことは確かなはず…。
「大丈夫?」
そう声をかけられた時わかった。
この人は佳じゃない。
佳はもうちょっと低い声…。
この人の声は何だか爽やか。
「実梨?」
あ…今度は佳だ。
「何してんの…?」
視界が虚ろで離れた佳の顔がよく見えない。
「あぁ、彼氏さん?
この子、たぶん日射病なんじゃないかな?」
「はぁ…」
「ゆっくり影があるとこか、店で少し休んだ方がいいよ」
「どうも…」
そう言って、私は佳に預けられ、声が爽やかな人はどこか行ってしまった。
「…実梨、そんなに疲れてるなら一言言ってくれればよかったのに…」
「ごめん…」
「とりあえず、どこか休める場所行こう」
暑さで今にも倒れそうな私は、佳に支えてもらいながらスーパーに置いてある長イスに横になった。
「佳…ホントはこんなのいけないんだけど…」
「俺がいるから大丈夫」
いや、大丈夫って…。
私の頭の上の方向には、佳もイスに座って優しく微笑んでいた。