先輩と後輩の恋愛事情
「…先輩、ありがとうございます。
もう大丈夫なんで…」
「ん、良かった」
「はい、なのであの…そろそろ放してくれませんか…?」
「え、あっ、ごめん!」
私の言葉の意味に気づいてパッと私から手を放し離れる。
私が泣いている間、先輩はずっと頭を撫でながら抱きしめてくれていた。
「実梨ちゃん、教室戻れる?」
先輩はベッドから下り、私に手を差しのべながら言った。
けど、その手をとることはしなかった。
「実梨ちゃん…?」
「あの…私まだここにいたいです…」
まだ一時間目が始まって半分の時間もたっていない。
あんなことが起こった後だ。
せめて一時間休んででもあの先生には会いたくなかった。
ベッドの上で体操座りして動こうとしない私を見た先輩は、小さく笑って
「じゃ、俺も一緒にいよっかな」
とまた隣に座った。
「…先輩は戻ってもらってもいいんですよ?
」
首をかしげながら言うと、先輩はハハハと笑い
「俺ももうちょっと実梨ちゃんと一緒にいたいから残るよ」
と言ってまたポンポンッと頭を撫でてくれた。
まだ私の気持ちの整理はつかずじまいだった…。