先輩と後輩の恋愛事情
「けっこー汚れてるな」
「き、紀田くん、私自分で洗うからいいよ…」
「いいよ、あんた上履きだし、濡れるだろ?」
「でも…」
ジャーと水で靴を洗ってくれる紀田くんの隣で、申し訳ないと思いながら見ることしかできなかった。
「うしっ!
できた!」
「ほらよっ」と投げて渡された靴をキャッチして見ると、見事に汚れ1つなく、キレイになっていた。
「すごっ!
キレイになってる!」
「当たり前。
俺が洗ったんだからな」
満足げに笑う紀田くん
あ、何だ。
ちゃんと笑えるんだ。
朝から怒らせてばっかりで、紀田くんの笑う顔を今日初めて見た。
「ありがとう、紀田くん」
「ん…。
つーかさ…」
微笑んでキレイになった靴を見ていると、頬をポリポリとかきながら紀田くんが聞いてきた。
「あんた、もしかしてイジメられてんの?」