先輩と後輩の恋愛事情
「……」
突然の言葉に体が固まる。
「な、何でそう思ったの…?」
自然に聞いた気がするけど、微妙に声が震えていた。
「だっておかしいだろ?
あんたの靴が泥だらけってさ。
まさしくイジメですって感じじゃん。
それにあんた、さっき泣いてたし…」
「な、泣いてないよ!」
「泣いてただろ。
靴がないの気づいて」
ぐっ…!
この人はどこから見ていたんだろう…。
「イジメ…じゃないよ。
ただの嫌がらせだよ…」
「嫌がらせ?
誰から」
「…先輩から」
「ふーん。
あんた目付けられてんの?」
「そういうのじゃないけど…。
ある人に恨まれてる…のかな…」
「恨まれてるって…」
紀田くんは驚いたような顔をしてた。
まぁ、恨まれてる。なんて言ったらみんな驚くよね…。
「じゃぁその靴といい、朝の濡れてたのとかも、全部その先輩がやったこと?」
「たぶん…。
朝のは恨んでる先輩じゃなかったけど、多分その先輩の友達か何かだと思う…」
「…はぁー。
あんたよくそんなことされて生活できてきたな」
「だってこれ今日が初めてだし…」
「マジか!?」
コクッと小さく首を縦に震る。
「…あぁ。まぁなんだ?
あれだ!もしまたこういうことがあったら俺に言え」
「え?」
「…話聞いたり、力になってやれることがあるかもしれねぇからな…。
こういうことは他のやつには話しにくいだろ?」
「うん…」
「じゃ、決まりな」
ポンッと頭を撫でられる。
紀田くんは私が思ってた人より、かなりいい人だった!
「ありがとう」
「おう」
初めての嫌がらせに戸惑ってたけど、紀田くんが相談に乗ってくれるって言ってたし、話してみて良かった。
これで多分、黒木先輩にバレることも少しなくなっただろう…。