先輩と後輩の恋愛事情
「んー、よく寝た!」
「紀田くん寝ちゃった後、私することなくて暇だったんだよ」
「悪ぃ」
苦笑いして謝る紀田くんと、食べ終わったお弁当を持って屋上から教室への帰り道。
「明日は寝ないようにするから」
「ホント〜?」
「ホントホント!」
「じゃぁ寝たら、ジュースおごってね!」
「え、マジ?」
「マジッ!」
ハハハハと笑ながら二人並んで廊下を歩く。
何かこんなに笑ったの久しぶりかも。
昨日からは嫌がらせばっかだったし…。
「…実梨ちゃん?」
ふと声をかけられて前に向き直る。
そこには、ジュースのパックを持ったままたっている先輩がいた。
「先輩!」
「…こんなところで何してるの?」
優しく聞く先輩だが、何か怒ってるっぽくて怖い…。
「えっと…。
お昼ご飯食べた帰りです」
「昼ご飯…。
でも食堂は反対だよ?」
「あ、屋上で食べたんです」
「…隣の彼と?」
「…はい…」
どうしよう…。
何か空気が重たい…。
もしかして、誤解とかされてないよね…?
「…そっ。
まぁ実梨ちゃんが誰とお昼を過ごすとか、そんなの自由だし…。
好きにしたら?
じゃ…」
そう言って先輩は私たちの隣を通り過ぎて、行ってしまった。
『好きにしたら?』
ズキッと先輩の言葉が胸に刺さる。
もしかして私、嫌われちゃったのかな…。
「…桜井、今の人…」
「黒木先輩だよ。
…私、先輩に嫌われちゃったかも…」
「…好きなの?」
「うん…」
好き…。
てゆーか、付き合ってるわけだし…。
…これから先輩に避けられたりとかされたらどうしよう…。
想像するだけで悲しくなって、涙が出てきた。
「悪ぃ、俺のせいだよな…」
「ううん、紀田くんは悪くないよ…」
紀田くんは悪くない。
私に手を差しのべて助けてくれていただけ…。
悪いのは…
私だよ…。