先輩と後輩の恋愛事情
【紀田】
…どうしたらいい?
この状況…。
「桜井、ひとまず涙拭け!」
どうすればいいのかわからず、ポケットに入れていたハンカチを桜井の目元に持っていき、優しく拭く。
「う…ごめん…ね」
声が震えて、今にもしゃくり上げそうなところだった。
「…保健室行くか…」
そう言って桜井の腕を掴んで保健室へ向かう。
桜井は
「大丈夫だよ!?」
と言っていたが、俺が
「大丈夫じゃない」
と言って保健室へ連れて行った。
「桜井、大丈夫か…?」
「うん…」
泣きすぎて桜井の目は赤く充血していた。
俺が、側にいたから先輩に誤解を産んだ…。
俺が、側にいなければこんなことにはならなかったのかもしれない。
桜井の泣く姿を見て、胸がズキッと痛む。
これじゃ、同じことだ。
嫌がらせで桜井が悲しくて辛くて、泣かないように、側にいることにしたが…結局俺のせいで桜井を泣かせてる…。
俺は側にいない方がいいのかもしれない…。
『…好きなの?』
『うん…』
さっきの会話がふいに頭に流れる。
桜井は、先輩が好きなんだ。
今桜井の涙を止める方法は、誤解を解くしかねぇ…。
俺の責任でもあるんだ。
俺が…行かねぇと…。