強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「私が勝手にもやもやしてるだけです」
「何を?」
「·····」
「言わないと、残業になるよ」

柳瀬は自分と違って余裕がある顔をしてる。

(そうだよ、私だけ。私だけ勝手に好きになって、嫉妬して、子どもみたいに顔に出して。)

百合香は肩に置いてある柳瀬の手が届かないよう一歩前に進んで手が離れたことを確認して、口を開いた。


「柳瀬さんが、ランチを誰ととったって、私には関係のないことです」
「は?」


柳瀬は訳がわからない。そんな反応をした。
そして百合香は床一点を見つめて続けた。

「関係のないこと…の筈が、ずっと頭から離れない」
「神野さん」
「すみません、私帰りますから!」

百合香は一気に駆け出してエレベーターまで向かった。

柳瀬は一瞬固まったままだが手にしていたファイルとボールペンを投げ捨て、すぐに百合香を追いかけた。


(早く、早く!
エレベーター、来て!
柳瀬さんの手に捕まる前に、早く!)


百合香はその思いからボタンを何度も何度も押した。
そしてエレベーターがくると扉が完全に開く前に隙間を通るようにしてエレベーターに飛び乗った。

< 101 / 610 >

この作品をシェア

pagetop