強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「そ····んな··」


(狡い。狡いよ…。
そんなことを言われて、私が拒否出来るなんて思ってない癖に。
“好き”を止めることなんて、私には出来ないって柳瀬さんならわかってる癖に。)


涙を溜めたままの百合香の目が柳瀬を見つめる。


「なぁ。本当に俺をどんな男だと思ってるんだ―――?」


柳瀬の手が百合香の顔を更に上に向ける。

近い距離で見た柳瀬の顔は、なんだかいつもの余裕が感じられない。


「俺が、誰とでもこういうことをするとでも?」
「…違うんですか」


はーっと深い溜め息をついた柳瀬はちょっと怒ったような、でもどこか照れたような、そんな顔をして百合香に言った。


「心外だ。俺だって、こうして君に触れるだけで結構緊張してるのに。」


百合香は驚いた目を柳瀬に向けて口を開く。

「や…なせさんが…?でも最初からそんな素振り···」
「必死だったよ、色々と」
「うそ!だって…だったらあんな風に、キスなんかッ…」

百合香は自分で言って思い出して恥ずかしくなった。



一番初めの、今と同じエレベーターの中でのキス。


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