強引な次期社長の熱烈プロポーズ
第4章

1.彼·彼女




帰るとまず、ご飯を食べて、それからゆっくりお風呂に入る。
百合香はいつもと同じように過ごしていた。
違うのは、柳瀬を想ってドキドキと何度も今日のことを思い出していること。

ひとつひとつ、確かめる様に柳瀬の言葉を思い出したりして。
そしてその度に、一人きりのバスルームでニヤけてしまう。そのニヤけを誤魔化す様にバスタブの中では口元が沈む位にお湯に浸かり、ぶくぶくと泡を出す。

その繰り返しで少し逆上せながらバスルームを後にし、リビングで水を飲む。肩に掛けたタオルで髪を拭きながら、棚の上に置きっぱなしのメモ用紙を手に取る。
あの日の柳瀬のメモを。


(本当に、この人が…私を…)


百合香はその字をずっと見つめていた。

大人で、字がとても綺麗で、容姿端麗。ちょっと雰囲気は他人を近づけさせないところがあるように感じるけれど、頼れる上司だし、素敵なことには間違いない。

今までどうしてこんな人と近くにいてなんとも思わなかったんだろう。
今ではもう考えられない。それくらいにこの人に惹かれて、心に想わない日はない。

百合香はここ数年振りに、女としての幸せを感じながら眠った。



明日もまた会える。

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