強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「それで…その、きっかけというか、なんというか…」
「私が柳瀬くんに何を言ったか、ってことね?」
「はい、何を言ってくれたのかな、と。」

過ぎたことには変わりないんだけど、やっぱり気になって。


「私はそんなに大したこと言ってないのよ。『昼休みに私が百合香に余計なことを言ったので、ちょっと様子見てください』としか」


(え?それだけ?
私が柳瀬さんとオーシャンの担当さんに妬いていたとか、そういう類のことは一切言ってなかったの?
なのに柳瀬さん、あの時…きっとカマかけたんだ。)

それに気付くとつくづく柳瀬には敵わないと百合香は思った。


「でもさ、とりあえずよかったね、ほんと。おめでと。」
「桜井さん…」
「柳瀬くんは軽い気持ちでそういうことするとは思えなかったしね!」


(桜井さんがいてくれなかったらこういう風になっていなかったのかも。)

綾が、自分に気持ちを気付かせてくれて百合香は感謝した。


「だけど、早速の今日に彼が休みって残念ね。」
「彼って…」
「だってそうでしょ?」

冷やかす様に綾が言った。

(だけど、社内では秘密にしておいた方がいいのかな。
そう言う話全然していないけど、柳瀬さんだって仕事やりづらくなっちゃうよね…)

百合香は一応綾にしばらく口止めをお願いしておいた。


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