強引な次期社長の熱烈プロポーズ

「ずっと本気なんだけど？」
「えっ」


にこにこ顔だけど今の坂谷はどこか真面目トーンで、確かに本気をアピールしてるのかな、と思った。
だとしたら余計にうまくかわすことなんか百合香には到底出来る筈がない。


「神野さんはさ、彼氏いるの？」
「彼氏····」


ちょっと声が低くなり、坂谷は逃がすまいと百合香に詰め寄る。
百合香はそんな坂谷のギャップと、質問の答えを探すのに戸惑ってしまう。



「坂谷くん！」
「はいっ？」

坂谷の後ろから名指しで呼ばれると、坂谷は焦って振り向き返事をした。
百合香が坂谷の体から横に少しずれて声の主をみると綾がお客様と一緒に立っていた。

「こちらのお客様、インクをご所望で。」
「あっはい！インクですね。メーカーはどちらかお分かりになりますか？」

間一髪、坂谷はお客様がついてその場を離れた。


「桜井さんっ」
「…またナイスタイミングだった？もしかして。」

ニッと笑って綾が言った。

（本当、なんていつもいいときにきてくれて助けてくれるんだろう！）