強引な次期社長の熱烈プロポーズ

百合香が手を止め、ちらりと柳瀬の方を見てみると、柳瀬は手元に視線を向けたまままたあの調子で深く溜め息をついた。

「あの」

（その溜め息はなんの溜め息…？）

百合香の不安をよそに、柳瀬が言った。


「ごめん」


（えっ。今、『ごめん』って聞こえたけど…智さんが？なんで？）


なぜ？？っていう顔をしている百合香を見て柳瀬がさらに口を開いた。

「…俺に気を遣ってくれてたんだな。確かにあまり俺たちの関係を軽々しく口外するのは得策じゃない。けど、それは俺の都合であって、エゴだ。」
「そんなこと！私、大丈夫ですから。」

百合香が慌ててフォローする。

「本当は…」
「え？」
「本当は、もうひとつ、理由がある。」


（理由が、もうひとつ？）


百合香がそれは何か聞こうとしたときに休憩に行っていた坂谷がタイミング悪く戻ってきたのだった。