強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「戻りましたっ。てかめっちゃ暇そうですね!」
「デカイ声で『暇』って言うな」

坂谷の相変わらずな言葉に柳瀬はすぐに切り返す。

「あ、神野さん磨いてんの?じゃあオレもー…」
「坂谷は倉庫から化粧箱補充」
「えー…」

ぶつぶつと文句を言いながら坂谷は倉庫へと向かって行った。
百合香がちらっと柳瀬を見ると、目が合って、ふいっとすぐ目を逸らして売場へ消えていった。


(きっと、智さんのヤキモチ。)


百合香は視線を手元に戻すと上機嫌で整頓を続けた。


ふと、目の前のメモ用紙に視線をやる。
午前中に、ここで速水が柳瀬に何かを渡していた―――。


(気になる…けど、ここではそんなこと聞けない。

仕事が終わってからゆっくり話がしたいな。
その話も勿論したいけど、ただ2人で、上司と部下じゃなくて、話がしたい。)


百合香は閉店まで黙々とペンを磨き続けるのだった。

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