強引な次期社長の熱烈プロポーズ

「江川くんは気づいてないよ！」

またいつもと同じ店で、綾はジョッキを口につけたあとどんっとテーブルに置いた。


「なんか、一応秘密の方向になったので…でも江川さんだから、もしかしたら柳瀬さんから伝わるかもしれませんね」
「そうかもね。だけど、江川くんは超鈍感だから自分から気付くことはまずないよ」
「そうなんですか」

百合香もジョッキを手にしながら話をする。


「実は…今日お客さんが柳瀬さんへメモを渡してたのを見ちゃったんですよね」
「もしかして、あのいつもの？」
「はい」


綾は早くも追加を頼むと、枝豆に手を伸ばしながら百合香の話に耳を傾ける。
百合香は思い出すだけで気落ちしてしまい、逆にビールも喉を通らなくなってしまった。


「電話番号のはずだけど…連絡やっぱりしちゃうのかな」
「んー…常連なだけ、気遣っちゃうのは確かだよね。それが、もし百合香の立場だったら、相手は男だし連絡しなくてもいいけど」
「…なんかすごく嫌なんです」