強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「ちょ、待て待て!!なんで中野が知っててオレは知らないの!?」
「それはおれが聞きたい」

「お前ら、うるさい」

江川がぎゃあぎゃあ騒ぎ、中野もまた余計なことを言う。
柳瀬は眉ひとつ動かさずに注文を始めた。

「出汁巻き卵、新漬盛り合わせ、串盛り、あと塩辛。」
「えっちょっとも一回言って」

溜め息をついて繰り返し中野に注文をした。
中野が厨房へ戻ると江川はやはりその話題を続ける。


「マジ?」
「・・・別に驚くことないだろう。今年31だぞ。」
「いやいやいやいや…だってお前ほんとそういうのわかんねーんだって!」


(俺のプライベートが分かりづらいんじゃなくてこいつが鈍感なだけなんだよな…大体昔からそうだ。こいつ、今でも知らないだろうし、過去だから言う必要もないけど。ちょっと桜井が可哀想だな。)


柳瀬は未だにビールには口をつけずに運ばれてきた塩辛に箸をつけた。

「まさか・・・彼女って」
「・・・・」


(さすがにバレるか。さっきのエレベーターでもちょっと気にはしていただろうしな。でも言うのはいいんだけどいちいち反応すんのが面倒だ…)


柳瀬が心構えをして、江川の次に発する言葉に備えたら、予想外の言葉が出てきて肩を落とした。

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