強引な次期社長の熱烈プロポーズ

時間は····２３時４５分。
柳瀬は自分の車に戻った。

（さすがにもう帰ってしまったか）

柳瀬は腕時計を見て、車を停車させた。
そして百合香に電話をする。

プルルルル、プル


『もっ、もしもし！』
「今どこ？」
『えっ駅に向かってますけど』
「どこの駅？迎えに行くよ」


ピッ

柳瀬は車を再び発進させた。
車内には自分一人だけなのに、百合香が電話に出るまでがとても早くて、声も上ずっているのが、自分の連絡を待っていたとわかるのが可愛くてつい笑ってしまった。


結構酒は好きな方。恋人が出来ても淡泊だった。
そんな俺が酒を我慢して、明日も仕事だっていうのにわざわざ人の多い駅へと車を走らせる。

（一体彼女はどこまで俺を狂わせるんだろう。）


こんな自分を知らない彼女は真実を知るとどう思うのだろうか。
軽蔑するだろうか。だとしても、柳瀬の選択肢には彼女がいなくなるというものは存在しない。