強引な次期社長の熱烈プロポーズ
(気付いたかな…)

まだ名前に慣れてないし、勢いで話すとやっぱり昼間の癖が抜けてない。

百合香がちらりと柳瀬の顔を見てみると向こうも目線だけこちらを見ていてドキッとする。

柳瀬が百合香の方に半分体を向かせると、百合香の腕を握って逃げられないようにした。そして、もう片方の手が百合香の頭の後ろに伸びてくる。

「…っ」

柳瀬の顔が近づくだけで胸の奥がキュゥっと締め付けられて、なぜだか涙が出そうになる。いやなわけじゃない。どうしようもなく、ドキドキしてしまうのだ。

唇を離すと柳瀬が百合香にくすっと笑って言った。


「ペナルティ、忘れてた?」
「…覚えてます」
「じゃあわざと?」
「―――ちっ違いますよ!!」



潤んだ目で顔を真っ赤にして、必死に抵抗しようとする百合香を柳瀬は愛しく思う。



柳瀬は百合香をもう一度引き寄せてキスをする。

「…唇、冷たい。寒い?」
「…暑いくらいです」

照れながら百合香がそういうと柳瀬は笑って包むように抱きしめた。


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