強引な次期社長の熱烈プロポーズ
その唇は押し付けるように百合香の唇を支配して、噛み付くように何度も何度もキスをする。
そのキスに百合香は窒息しそうになる。


「気付かなかった?」
「っは…ぁ」
「こうして奪ったことを」
「あ···」


あの日、この部屋で夢かと思ってたキス。
だけど確かに感触が唇に残っていたから、もしかして―――――とは百合香も思っていた。


「だけど、『寝てる女にはなにもしない』って言ってたから――――」


柳瀬の大きな両手が小さな百合香の顔を包み込む。そして右手の親指を百合香の唇をなぞって囁いた。


「『基本的に』って添えて言ったんだけどね」
「そっそんなの、狡いっ」
「狡い狡いってさっきから言うけど、余程君の方が狡いと思うけど」
「わ私…?!」


柳瀬は百合香の髪をかきあげるように撫でた。
百合香はさっきから視線を一瞬足りとも外さない柳瀬を見つめ返して瞳を潤ます。
百合香の細い腕の先はきゅっと柳瀬のシャツを掴んでいる。

そんなひとつひとつが柳瀬にとっては堪らなく可愛くて、すぐにでも理性が崩れそうだ。
それを必死で耐えていたのも限界にきていた。



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