強引な次期社長の熱烈プロポーズ


ガコン、
ウィーン

百合香は2階に着きエレベーターから降りる。

すぐそこに背を向けてパソコンに向かっている柳瀬の姿を捕えた。
一瞬で頭から足の先まで熱くなる。

(冷静に、冷静に。)

軽く深呼吸をして、戻りました。と声を掛けてそこを横切る。
ちらりと柳瀬の方を確認したけど、彼はパソコンから目も離さずに一言、はい。と言っただけ。


(こんなに私は意識してるのに、なんだかばかみたい。)


そう思いながら足早に万年筆コーナーへと戻ると坂谷がいた。

「あ、おかえり。」
「あ…戻りました…」

百合香がそう言って私物を引き出しにしまうと、坂谷の視線が未だ自分にあることに気付き、顔を上げる。


「なにか?」
「あ、いや!なんかあったのかなって」
「え??!」
「なんか泣きそうな顔してた気がしたから」


(泣きそう?私が?そんな顔してる?)


百合香は精いっぱい笑顔を作った。

「気のせいですよ」

その顔を見て坂谷は、そうみたいだね。と言って業務に戻って行った。

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