強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「あとこれ、合鍵」
「えっ」
「家の中のものも自由に使って」


ポンと自分の掌の中に銀色に光ってる合鍵。こんなに簡単に預けてくれるのがすごく嬉しい。

靴を履いて、玄関のドアノブに手を掛ける柳瀬の背中を見送ると、昨日と同じでやっぱり離れたくないという気持ちがちらりと覗かせる。

その視線を察してか、柳瀬はドアノブから手を離し、ごく自然にキスをひとつ落として『行ってきます』と出社していった。

百合香はその一瞬のキスに暫し硬直し、頬が熱くなるのを感じて自分の手で熱を冷ましながらリビングに戻った。


RRRRRR♪

「わっ!」

絶妙なタイミングで携帯の着信音が鳴った。


(あれ…でもこれ私の着信音じゃない…?
まさか、智さん忘れて行っちゃった!?)


百合香は慌てて音の鳴る方へ探りながら部屋を歩く。
すると、机の上の隅で音を発している柳瀬の携帯を見つけた。

RRRRRR

(あ、まだ鳴ってる。どうしよう。)

プツッ


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