強引な次期社長の熱烈プロポーズ

「智さんっ！！」

車のエンジンをかけようとしたところだった。
柳瀬は驚いた顔で窓を開けて息を切らした百合香を見る。


「なに？なんかあった？」
「あの、これ。忘れてました。」
「え？あぁ。本当だ。」
「···なんか着信があったようでした」


柳瀬は百合香のその言葉に、ありがとう。とだけ笑って答えて車を出してしまった。


「…信じる。信じなきゃ。」


百合香は自分に言い聞かせるように白い車を見ながら呟いた。





＊


（今日の夕飯は何にしよう）

百合香は気分を変えるために違うことを考えようとしていた。

（智さんの好きなもの位聞いておけばよかったな。
あ、メール。メールで聞いても大丈夫かな。会社の人に見られないかな。）

そんなことを考えながら自分の携帯のメール作成画面から先に進まない。


【昨日は江川さんと飲んでいたんじゃないんですか？】


勿論そんなこともメールでなんて聞けやしない。