強引な次期社長の熱烈プロポーズ


無事に開店準備が終わるとバイトの2人も出社してきて柳瀬は坂谷に後を任せて電話を手にした。


PRRRRR PRRRRR

『はい。オーシャン阿部でございます。』
「弐國堂、柳瀬です。」
『柳瀬さん!いつもお世話になっております』
「いえ、こちらこそ。メールの件なんですが」


電話先の女性はメールの送信主のオーシャン阿部美雪《あべみゆき》


以前百合香が柳瀬とランチを一緒に取ったであろうと嫉妬をした相手である。
美雪は今年1月から引き継ぎで前担当者と頻繁に入店し始め、4月から本格的に柳瀬のいる弐國堂文具の担当となった。
年齢は柳瀬と同じ30で、仕事は出来ると評判は上々。

ハッキリとしたもの言いで、男性社員にも負けず劣らずの働きを見せている。


「今日でしたら午後3時以降だと助かります」
『わかりました。では3時に伺います』


そうして電話を切ると柳瀬はふぅっと一息つく。

正直あまり得意なタイプではない。
仕事上の関係だから表には全く出さないし、そこまで困ることはないのだが。
柳瀬は洞察力に長けているので、美雪の性格も大体想像がつく。

面倒なことは避けたい。それだけが柳瀬の思いだ。

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