強引な次期社長の熱烈プロポーズ
柳瀬は美雪に挨拶すると、上へ。と事務所まで案内した。

美雪は坂谷に、また。と挨拶をして柳瀬の後ろに着いて歩く。


事務所の中の商談室が空いていたのでそこで打ち合わせを始めた。


「まず、当社の工場見学出張の件ですが…」
「はい。予定通り来週に。」
「柳瀬さんがいらっしゃいますよね?」
「…悩んでいます。」


年に1、2度の見学。
万年筆やボールペンの生産過程から、細部の仕組み説明など内容は多彩。
それだけに、自分だけでなく坂谷や百合香にもチャンスを…と柳瀬は悩んでいた。
ただ、今年はその見学させてくれる工場のメーカーとのコラボ企画、オリジナル筆記具などを考えているだけに、担当兼万年筆コーナー責任者の柳瀬が今回足を運んで挨拶をすべきかと考えているのだ。


「うちの工場はまた来年機会があると思いますから、今年は柳瀬さんの方がいいのでは?」
「…そうですね」
「私も同行しますけど、宿の手配なども任せて頂いても?」
「御迷惑でないのならお願いします」


そういって柳瀬は自分の手帳のカレンダーに出張と記入した。



「では、私はこれで。あ、何かありましたらこちらの番号も渡しておきますので」

そう言って受け取った名刺には手書きで携帯の番号が書いてあった。


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