強引な次期社長の熱烈プロポーズ
＊


「うん、できた。」

夜になって百合香は柳瀬の自宅のキッチンに立っていた。

今日は日中は自宅に一度戻って着替えをし、買い物をして戻ってきた。
そして約束の夕飯の支度をして柳瀬の帰りを待っている。

ロールキャベツをさっきまで煮込み、考えてたのは今朝の留守電。


確かに、百合香が知らない人のことをいちいち説明する必要はない。それでも、どういういきさつで送ることになったとか言ってほしいし、聞きたい。


一日中、何か他のことを考えようとして、でも結局は忘れることなんか到底できなくて。

百合香は静かな白い空間にただ座っていた。

そんな時に電話が鳴った。


「もしもし！」
『ああ、今から帰るよ。何か必要なものある？』
「いえ、特には…智さんが必要なものだけを」
『俺はもう必要なもの、家に置いてきたから』


柳瀬に『必要なものを家に置いてきた』と言われて、それは自分のことかと気付いて、顔は見えてないはずの電話なのに反射的に近くにあったクッションに顔を埋める。


あと30分以内には。と告げられて電話を切った。


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