強引な次期社長の熱烈プロポーズ
『え~…なんか、普通だったら超怪しいけど』
「や、やっぱり…?」
『ん?いや、“普通”なら!でも柳瀬くんだからさ~きっとなんか事情あるよ』
「そうですよね…気にすることないですよね」


綾の慰めに少し元気を取り戻した百合香はもうすぐ柳瀬が戻ってくる、と綾にお礼を言って電話を切った。


ちょうどその時に玄関から音がした。


「ただいま」
「おっおかえりなさい!早くないですか?30分かかるって…」
「ああ。百合香がいると思ったら早くなった。」「スピード違反で捕まりますよ」


綾に話したおかげで少し笑えるようになった。
大丈夫、きっと普通にできてるはず。
そう思いながら笑顔を向ける。


「何作ってくれたの」
「あ…悩んだんですけど」
「そうだろうと思ってたよ」


柳瀬は上着を脱いで、ネクタイをはずしながらテーブルに着いた。

「あの、お風呂は?」
「後でいいよ、せっかく作ってくれたの冷めるから」
「でも…」
「それとも一緒に入りたい?」


いつもの彼の笑い方。
喉の奥を鳴らして目を細める。
こういう笑いをするときは決まって百合香をからかっているとき。
わかっていても平然とは出来なくて、結局反応は柳瀬の予想通りになってしまってちょっと悔しい思いをする。


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