強引な次期社長の熱烈プロポーズ
(ああ、客注商品発注を午前中にファクスして。担当メーカーに折り返しの電話と。あとは商品入荷確認を商品課に…あ。この間の企画の話も詰めなくちゃ。)


やることがないよりはあった方がやりがいもあるし、何より時間が早く過ぎてくれる。
それに目の前の仕事をこなせていくと、楽しさを感じる。


百合香は、よし。と意気込むと、いつものようにまずは硝子を磨き始めた。


ハラリと一枚のメモが床に落ちた。

(智さんの文字だ!)

内容は他の皆と同じような伝言のみ。
だけどそのブルーブラックの文字がなんだか懐かしくて見入ってしまった。


(またインクをブルーブラックに変えたのかな。)


柳瀬のブルーブラックの字だけで百合香の胸はドキンとする。


褪色しづらい色という通りに百合香の中から初めて自宅でメモを見た時の気持ちは色褪せない。

< 208 / 610 >

この作品をシェア

pagetop