強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「もう少し私を知って頂いてから、という風にはならないですか…?」
「すみませんが、それもありません」
「その方に悪いから…?」


意外にも食い下がる速水に百合香は二人の会話が気になって手が一向に進まなかった。
そして堪らず顔を上げて二人のいるカウンターに目を向ける。


「それも勿論ですが、この先彼女以外にはあり得ないと思ってますから」


清々しくはっきりと言い放った柳瀬に速水は小さく溜め息を漏らして笑った。


「···彼女が羨ましいわ」


そして柳瀬がポケットから一枚の紙を取り出したのが見えた。


「これは、お返し致します」
「····不要よ。処分しておいて下さい」
「…承知しました…」


そして速水はくるりと背を向けエレベーターの方へと一歩踏み出した。

< 211 / 610 >

この作品をシェア

pagetop