強引な次期社長の熱烈プロポーズ
休憩室に入ると一番奥の席の江川が目に入った。

（昨日江川さんの奥さんに会ったことは多分知ってるんだろうな。勘違いしたこと謝った方がいいかな…）

「神野さん！」

そんなことを考えてる間に、江川の方が百合香に気がついて声を掛け、手をあげた。

百合香は会釈をして江川の向かいの席についた。
今日も江川はお手製のお弁当を広げて食べていた。

「お疲れ様」
「あ、お疲れ様です。あの、昨日···」

百合香が小声で話すと、江川も合わせて小声にしてきた。

「まどかから聞いたよ。なんかオレのせいで悪かったね」
「いえ！私の方こそ、奥様に失礼な態度をとってしまって…」
「いや？まどかは随分神野さんを気に入ったみたいだったよ」
「ほ、ほんとですか？」

コソッと言われたその一言で、百合香は安心して笑顔を見せた。
柳瀬の友人である江川の妻に悪印象を持たれたら悲しい。
とりあえずはそのようなことがないとわかり、百合香は肩の力が抜けた。

「っていうより！びっくりしたよ、聞いたときは！」
「え？あ、ああ！」

柳瀬と恋人同士というのを知られてから江川と会うのは初めてだった。
なんだか話の順序が滅茶苦茶でそんなこと百合香の頭からはすっかり飛んでいた。

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