強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「昨日さ、柳瀬も休みだったでしょ。だけどオーシャンの阿部さんが外回りでうちにきてくれて・・・」

“阿部さん”

その名前を聞いただけでいい話ではないことは確かだし、さっきと同様嫌な感じがして堪らない。


「うちのフロアにも勿論オーシャンの商品あるからさ。品出しとか積極的にやってくれてて。ってまぁそれはいいんだけど」
「・・・はい」
「そしたらさ、オレ、柳瀬と同期って知ってたみたいでちょっと聞かれたっていうか…探られたっていうか」
「・・・何を、ですか?」


百合香は大体想像はついてはいたけれど、それを自分の口から言いたくなかった。

「柳瀬がさ、彼女いるかとか、今までどうだったとか。今現在そういう対象がいそうか、とか・・・」

(やっぱり・・・さっきと一緒だ。)

美雪は柳瀬を狙っている。それもかなり積極的に。

「さりげなく色んな会話の中に織り交ぜて質問してはきたんだけど、さすがにわかるよ、あんな感じだったらさ。」

江川はその時のことを思い出したのか呆れたようにそう言った。


「勿論、神野さんのことは伏せておいたし、ほとんど濁しておいたんだけどね」


江川は百合香を不安にさせたくなくて、いつもの優しい笑顔で心配ないよという意味合いでそう言った。
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