強引な次期社長の熱烈プロポーズ
百合香と坂谷は慌てて音のする方へ顔を向けた。
そして瞬時に坂谷は鞄を手から離し、百合香は坂谷と距離をとる。

「2人で裏にいたらダメだっつーのがわからないか」

さっきの坂谷よりも遥かに低い声でそう言ったのは柳瀬だ。

「あっ…す、すみません!」
「すいません!戻ります!」

百合香は頭を下げ、坂谷は会話が会話だったせいかすぐにその場を去って売場に戻った。

柳瀬は壁にもたれかかったまま腕組をしてずっと百合香を見ている。
百合香は視線を逸らして鞄を抱きしめるように抱え、柳瀬の横をすり抜けようと足早に歩いた。

グイッ

「ひゃっ!」

すれ違いざまに百合香は腕を掴まれて、またバックヤードの中へと戻された。
さっきの棚よりももっと奥へと引きずり込まれると、棚と棚の間に押し込まれる。

「あの…」

恐る恐る柳瀬の顔を見上げると、予想通り…いや、予想以上に目が据わって怒った表情の柳瀬が百合香を見ていた。



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