強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「ごっごめんなさい!」

百合香は目を閉じて小さな声で謝った。
柳瀬は一歩また一歩と百合香を行き止まりへと追いやった。

「謝るようなことしたの?」

薄暗い中で、柳瀬の瞳が光っている。
百合香は思い切り首を横に何度も振って否定をした。

「百合香、隙だらけ」
「でも逃げて…っ」
「逃げてって、こんなところに?」

確かに、現に今、柳瀬に追い詰められている百合香は逃げ場がない上に薄暗くて人も頻繁には出入りしない場所だ。

「もうちょっと、気にして。じゃなきゃ俺、出張なんか到底行けないよ」

返す言葉もない。
さっき、智さんが来なければどうなっていただろう。
別に襲われるとかそういうことはないだろうけれど、約束したり、連絡先位教える羽目になっていたかもしれない。
さらには他の人に見られていたら、変な噂にもなっていたかもしれない。

「すみません・・・」
「・・・だめ。許せない」

そう言って柳瀬の手が百合香を引き寄せ、頭を掴まれてキスをされる。

髪の毛が乱れるんじゃないかっていうくらい強く、優しく、激しく掴まれるその手から、柳瀬の感情が口で言うよりずっとストレートに伝わってきてきゅうっと胸が締め付けられる。

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