強引な次期社長の熱烈プロポーズ
息するのがギリギリ。
声なんて出す暇も与えられない。

唇を離し、呼吸が乱れた百合香を見て柳瀬はもう一度、今度は触れるだけの短いキスをする。

「···狂うな」
「···え··?」

柳瀬が百合香の顔を両手で掴んでそう言った。

「こんな風に、公私混同しない主義だったはずなのに」

そして強く抱きしめられた後、柳瀬は表情を元に戻して背を向けた。
百合香はまだ呼吸も、顔も整えられないでいた。

「帰り、車で待ってる。その顔直したら売場戻って」

柳瀬が売場へと先に戻ると百合香はその場に座り込んでしまった。

(薄暗いからどれだけ私の顔が赤くなっていたか、智さんにはわからなかったかな。)

坂谷への対処の仕方は反省してる。
けど、ちょっとだけ。
ちょっとだけこうなったことが嬉しいと思うのは自分だけの秘密。


どんな時でも貴方に触れて欲しいと思ってるから。



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