強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「ああ。これはお仕事でですけど。出張中何かと不便になったら困るので、携帯番号を交換していただいても?」
「常に一緒に行動するのでは?」
「…予定はあくまでも予定ですから」


柳瀬は勝ち誇ったように言う美雪を見て、渋々口頭で番号を言った。
美雪は早口とも取れる柳瀬の言い方にも全く動じず、すぐに復唱できるくらいだった。

携帯を鞄から取り出すとその場で柳瀬にコールする。
柳瀬はポケットの中で音がする携帯を取り出すことなく美雪を見るだけ。

「それが私の番号ですから。名刺にも書いてあったんですけどね」
「···仕事以外では掛けないで下さい」
「さぁ?でもとりあえずはそのようにしますね」


柳瀬の顔が少し不機嫌そうになったのを美雪は察して笑顔で言う。

「柳瀬さんは今日はご予定があるみたいですね。ではまた改めて」

そして嘘のようにあっさりと引き返して行った。

< 235 / 610 >

この作品をシェア

pagetop