強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「神野さん」
「阿部さん…!」

ショーケースを挟んで声を掛けられた。

今日もパンツスーツを着こなして、素敵な笑顔で挨拶をしてきた美雪に声を掛けられてドキリとする。

「今日は坂谷くんはお休みなんですか?」
「あ、はい。何かありましたか?」
「ちょっと。だけど私用だから」

そう言って美雪は少しおどけた笑顔を見せた。そのままそこから動かないので二人の空間が続く。
百合香は何か会話を…と、話を振った。


「あ、の…明日からの出張って、オーシャンコーポレーションの工場にも行ったりするんですよね?」
「ええ。事務筆記具から万年筆までの色々なラインを見学できるわ。あとは展示室なんかも」
「展示室?」
「廃盤商品や、稀少価値商品、うちの歴史が色々わかりますよ」


(万年筆の工場だなんて!
どんな感じなんだろう。
昔の文具にも興味あるな。)

百合香は呑気にそんなことを思って色々と想像していた。
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